
本区の運営並びに事業推進に対しましては、日頃から格別の御理解と御支援を賜りここに厚くお礼申し上げます。
さて、昨年は能登半島の大地震に始まり、7月の豪雨では本区も大きな被害が発生いたしましたが、いま更に世界に目を向ければ、これら自然災害のみならず、世界的な人口増加による食料需要の増大、紛争による食料生産の減少や経済ショックに起因した物価の高騰などの様々な要因も重なり、食料の安定供給に対する国民の不安も高まりつつあることからも、この先の食糧問題はかつてないほどに深刻になりつつあります。
日本の食料安全保障の要は、これまで他国との競合・輸送障害等のリスクを下げることに努めながら、より安定的な食料供給を図るためにも国内で生産できるものは、できる限り国内で生産することを基軸としてきたものでありますので、これからも特に主食である米はきちんと国民の期待に応え続けられるものでなければなりません。しかし、食料生産の現場である地方農村部では、国民から求められるそれら役割とその責任の重さとは逆に、高齢化と急激な人口減少が深刻な問題となっているだけではなく、同時にここまで地域農業を支えてきた土地改良施設などインフラの老朽化に対する国民の不安の高まりからも、農業農村の存続すら危ぶまれているところです。
これからも必ず起こり得るであろう大地震や豪雨などの災害は誰にも予測はできませんが、いまここで最も大切なことは、防災・減災として備えることであります。現在ここ庄内地域は、東北部日本海沿岸で震度6以上の大地震に見舞われる確率の高い地域として想定されているところでもあり、近年特に激甚化・頻発化する豪雨による大規模自然災害なども含めれば、日頃から如何にこれらからの被害を回避・軽減できるかについて、そのための備えをどのように推し進めていくかが問われております。
このような時代を迎えて、令和7年4月1日より施行された改正土地改良法では、生産基盤の保全が目的に明記されたことを受けて、土地改良区が市町村その他の関係者と議論し、保全に取り組む計画「水土里ビジョン」を策定できる仕組みが新たに設けられました。弱体化が進む農業と農村において土地改良区の運営基盤の強化を後押しするこれらの動きからも、この国は土地改良区という組織に高い期待を寄せていることが感じられます。
本区は、国の認証を受けた流域治水オフィシャルサポーターとして、防災・減災の観点から積極的に田んぼダムの取り組むことによって流域治水に貢献しておりますが、天災における備えとしての個人や行政が行う「自助」「公助」には限界が見える中にあって、現在では地域の助け合いに着目した自治会・地域コミュニティが行う「共助」と「協働」への期待が高まっており、この「共助」に必要な地域の信用と信頼に裏打ちされた関係性構築については、すでに管内で広く行われている多面的機能支払交付金での様々な活動をとおして、持続可能な農村社会の核となる共助の精神が、それぞれの地域でしっかり養われていると評価しているところです。
これからも本区は、新たな地域づくりや未来農業を見据えながら、その時代に新たな価値を生み出せるよう、常に組合員のためにあるべき組織として、また、同時に機動力ある組織づくりに心がけ努めながら、ここの農村振興はもとより、地域の一翼を担っていけるよう精励する所存でございます。
最後になりますが、関係者各位におかれましては、これまで同様忌憚のないご意見と共に、引き続きご指導ご支援を賜りますようお願い申し上げ挨拶に代える次第です。